草原のはずれに、小さな村がありました。そこに住んでいるのが、エモンという犬。エモンはとても誠実で、村の人々を守るのが毎日の仕事です。でも本当は、広い世界を見てみたいという夢をずっと抱えていました。

ある夜、エモンは星空を見上げながら、ぽつりとつぶやきました。
「どこか遠くへ行ってみたいな…。でも、ぼくにそんな勇気、あるのかな。」

そのとき、風の向こうから重たい足音が聞こえてきました。現れたのは――金色のたてがみを持つ、大きなライオン。

「名前は?」とライオン。
「エモン…犬です。」
「おれはライオン。遠くの山から来た。強くなりたいなら、ついてこい。」

エモンは迷いました。でも、胸の奥のなにかが「行け」と言っている気がして――翌朝、エモンは村をあとにしました。

ライオンは厳しかったけど、公平で優しかった。山を登るとき、怖くて足がすくむと、ライオンは言いました。
「おまえは小さいけど、心は強い。それがすべてだ。」

季節が巡り、エモンは帰ってきました。前よりずっとたくましくなって。でも、目の優しさは変わっていません。

村の人たちは驚き、そして喜びました。エモンはもう、ただの犬ではありません。夢を追って、本当の強さを手に入れた――勇気ある者となったのです。