ビーナスラインのプール平。
山なのにプール平とはへんな地名。
そこには、かけ流しの公衆温泉浴場がある。
郵便局と銀のポストという
旧郵便局舎を利用した喫茶店もある。
その前の細い路地を ちゅちゅ美 と に子 は、
足早に通り抜けていった。
しばらく歩くと森の入り口が見えた。
立て看板に大滝まで7分と書かれていた。
直感でこの時間は旅行者をその気にさせる
やさしいウソだなと思った。
森の中に入ると徐々にアップダウンが激しくなってきた。
普通の人なら、どうってことない段差も
体高15cmほどの二人には、
マッターホルンに登るようなものだった。
♪ものの〜けたちだけ〜ものの〜けたちだけ〜
♪ものの〜けたちだよ〜ものの〜けたちだよ〜
どこからともなくカウンターテナーの声が聞こえてきた。
ふと顔をあげると、そこには、ぐにゃぐにゃの木々と
苔にうめつくされた原生林が広がっていた。
「これこれ〜」
「これでしょ。これ。」
二人は曲がった木の上で肩を寄せ合って記念写真を撮った。
に子は、自分だけすました顔で撮ってもらった。
幻想的な森に後ろ髪をひかれながら別れを告げ
しばらく進むと目の前に大滝があらわれた。
そこには、マイナスイオン何万個という看板はなく、
ただありのままの自然があった。
「This is TAKI.」
「TAKI and TAKKYU.」
「They are 電気グルーヴ.」
「But….」
「We are ちゅちゅにこクラブ!」
二人の声がそろった。
そして、また記念写真を撮ったのだった。
蓼科の大自然に癒された二人。
ここは、穴場スポットとして、
秘密にしておこうと約束した。
そんな二人の様子をキノコ達は見ていた。
キノコ達の噂は胞子となって、
二人の様子を八ヶ岳まで伝えたのだった。